時には、強引に。

ちょっとばかし、気を抜いて。






  学






「トシィ〜、腹痛い。」



俺は机に覆いかぶさるように身をかがめ、左隣に座るトシの顔を見上げた。



「あん?下痢か? じゃトイレ行ってこいよ。」



トシは教科書をめくりながら、興味のなさそうな顔で俺を見遣った。



「違ェよ〜。溜まりすぎて痛ェの。」

「じゃあ便秘か? 知らねーよそんなこと。」



イラついているように眉間に皺を寄せ、トシは板書をノートに書き写した。



「だから違ェって・・・ニブいな〜、トシは。」



俺は諦めて身を起こし、ノートの端を破ってトシにメモ書きを渡した。



「あぁ? ・・・っ!」



それを目にしたトシは一層眉間の皺を深め、俺をチラリと見た。



「んふ。そゆこと♪」



カワイコぶるように首を傾けて笑顔を振りまくと、しかしトシはふぅっと溜め息をつき、そのまま机に突っ伏した。



「ちょ、ちょっと何だよ〜。嫌なのかよぅ〜?」



肩を掴んでトシを揺さぶると、その顔がゆっくりとこちらを向いた。



「・・・何で今なんだよ?」

「え〜、だってもうすぐ授業終わるしぃ〜。」



な? と機嫌を伺うと、トシはまた一つ大きな溜め息を漏らし、そのまま目を閉じた。



「え、何トシ、寝ちゃうの? あ、体力温存? さっすが〜。」



俺は一人都合よく解釈し、ウキウキ気分にひたっていた。




*****




何なんだ。 何だってこんな真っ昼間から・・・いや、だってまだ午前中だぞ? それなのに・・・


勲から渡された紙切れには、ただ平仮名3文字、「したい」と書かれていた。

まさかと思い試しに死体のモノマネをしてみたが、やっぱり違ったらしい。


「したい」は「ヤりたい」だったらしい・・・。


いや、別にしたくないわけでもないのだが、やっぱり心の準備というか、それなりの雰囲気というか・・・気にしろよ。

まぁそんな細かいところを気にもせず本能のままに突っ走るのも勲らしいといえば勲らしいのだが。


・・・とりあえず、マジに体力温存しとくか。




*****




授業が終わり、俺はチャイムとほぼ同時にトシを起こしに掛かった。



「ほら、トシィ。どこにする? 屋上?」

「・・・っな、今すぐかよ? まだ2時間目終わったばっかだぞ?」

「うん。だから休み時間じゃねーか。行こう。」



俺はトシの腕を引っ張った。



「ちょ・・・行こうじゃねーよ。せめて・・・その、昼休みとか・・・」

「あと2時間も待てねーよぅ。」



俺は口をとがらせてせがんだ。



「それくらい我慢しろって・・・あ、次体育だぞ? 着替えねーと・・・」



トシは俺の腕を振りほどくと、机の横に掛けた袋からジャージを取り出し、学ランを脱いだ。



「体育か・・・あ、今日って確かマラソンじゃね?」

「あ? あぁ・・・そうだったかもな。」

「じゃあ丁度いいじゃねーか。」



俺もジャージを取り出し、トシの耳元で囁いた。



「走ってるフリして、二人で途中でフケちまおーぜ。」

「なっ・・・!」

「大丈夫だって。顔が赤くなっても息が上がっても、腰が立たなくなったって全部マラソンのせいにしちまえばいーんだしさ。な?」



顔を離すと、トシの顔は既に真っ赤になっていた。 可愛い奴め。




*****




まさかそんな大胆な提案をしてくるとは・・・。


俺はもう何度目か分からない溜め息に気力を失いつつ、トボトボと最後尾を走っていた。



「トシ、そろそろその脇道入ろーぜ。もうとっつぁんの姿も見えねーし。」



隣を走る勲は、俺とは対照的にこの上なくパワーを有り余らせて走っていた。


とっつぁんというのは体育教師・松平の通称なのだが、俺は正直、その点にも懸念があった。

とっつぁんはサド王子と異名を取る同じZ組の沖田総悟に引けを取らないサディストの面を持っている。
もしもサボっている所・・・いや、サボりどころか事に及んでいる所を見つかりでもしたら、拳固の一発や二発じゃ済まねーだろう。


なにしろ奴にはヤクザの家系だと言うあまりにもっともらしい噂も立っているからなぁ・・・。



「トシ、ほら行くぞ。」



そんなことをぼんやりと考えているうちに、俺は勲に背を押されるまま草の茂った体育館の裏に来てしまっていた。




*****




「考えてみりゃこういう場所で青姦って初めてだな〜♪」



屋上でしたことならあったんだけどね。



「ウルセーよ。何で外なんだよ・・・。」

「いいじゃねーか。わざわざ中入るよりてっとり早いし。」



俺は小声で文句を垂れるトシを壁にもたれさせ、体操着をめくった。



「ちょ・・・寒ィよ・・・もう11月だぞ?」

「大丈夫大丈夫、すぐあったまっからさぁ・・・」



俺は裾から手をもぐり込ませ、トシの胸をまさぐった。



「やめろって・・・! 寒ィよ〜・・・」



トシが本気で涙目になっている。

確かに外気に触れる腹の辺りには鳥肌も立っているし・・・ちと可哀想か。



「分かったよ。もう服はめくらねーから・・・」

「でもどーせ下は脱がすんだろ? 嫌だ。寒い。」

「そ、そう言われても・・・下はどうしょもねーだろ?」

「嫌だ。寒い。」



くそぅ、いつもは素直に言うことを聞いてくれるのにぃ。

トシは寒いのが苦手だからなぁ・・・。 そういうトコに関しては断固として譲らねェの。


・・・こうなったら、もうトシをその気にさせるしかねぇ。



「っ・・・!」



俺はトシのほの青くなった唇に口付けた。



「ん・・・ん・・・っ!」



舌を絡ませ、服の上から敏感な部分を擦りながら口付けを深くしていくと、だんだんとトシの体から力が抜けていった。



「・・・は・・・っ・・・やめ・・・んぅ・・・」



抵抗を許さず呼吸さえ苦しくなるほどにキスを繰り返す。

するとそのうちにトシの目がトロンと潤み、ついに体から完全に力が失われた。



「っ・・・はぁ、はぁ・・・」



耳まで真っ赤に染めて俺に抱きとめられたトシの体は、もうすっかり「その気」になっていた。




*****




体が熱い。 頭がぼんやりする。



「トシ。」



耳元で囁かれているのだろうが、なんだかすごく遠くで発せられているように聞こえる。



ジャージのズボンの中に手が入ってきた。

あぁ・・・ダメなはずなのに、体が動かない。



「あっ・・・!」



下着の上から前を擦られ、俺は思わず小さく声を上げてしまった。



「あ・・・ん・・・ふ・・・っ」



触れられている部分にどんどん熱が集まり、俺は反射的に出てしまう声を抑えようと、勲の肩口に顔をうずめた。



「トシ・・・俺の体、掴まってられるか?」

「・・・ん・・・」



顔を押し付けたまま小さく頷くと、勲は俺の背を抱えていた手をそのまま下に降ろし、今度は下着の後ろ側へ入れてきた。



「んっ・・・!」



少し冷えた指先が後孔に触れ、俺はビクリと身を竦ませた。



「力抜いてろよ・・・?」



言われなくたって、もう力なんて入んねーよ。


ますます増えた熱が更に頭に昇り、勲の肩越しに見える木の葉がぼんやりと歪んだ。



「トシ・・・」



ジャージの下が半分ほど脱がされた。


もはや寒さも感じねェ。 俺もたいがい興奮してんな・・・。



壁に背が押し付けられ、脚が抱え上げられた。

くそ。 ジャージという素材はどうしてこうも伸びがいいんだ。



「あ。」



挿入を待っていると、勲が急に動きを止めてポケットを探り、コンドームの袋を取り出した。



「ヤベヤベ、着けるの忘れてた。」



バカヤロウ。 なんて手際が悪いんだ。

・・・まぁいつもは平気で中に出させちまってるから慣れないのも仕方ないが・・・。



しかしそのくらいの放置では俺の熱は冷めない。

あぁ・・・あんなに嫌だったはずなのに、今は早く入れて欲しくてたまらない。



「待たせたな。」



そんな俺の心を見透かしたかのように、勲は俺に口付けながら、ゆっくりと俺の中に熱い滾りを埋め込んだ。



「あっ! ・・・はぁ・・・ぅ・・・」



待っていた熱に大きな声が出そうになってしまい、俺はジャージの袖を噛んだ。



「ん・・・んん・・・っ・・・!」



激しく揺さぶられ、俺は息苦しさに耐えながら早くも絶頂の極みに達しようとしていた。



の、だが。



「あ。」



勲がまた間抜けな声を上げ、俺は固く閉じていた目を薄く開いた。



「トシのにもゴム着けとくの忘れた・・・」



もう、そんなこと知らねぇ。



「ん・・・ん・・・うぅっ・・・!」



俺は再び目を閉じ、握り込んできた勲の手の中に渦巻いていた熱を放出した。




*****




「あーあ、ティッシュも忘れた・・・」



俺は力を失ったトシの体を抱えながら、手についたトシの精液を舐め取った。



「トシも俺の舐めてね。」



言うと、ぐったりと目を伏せていたトシが弾かれたように顔を上げた。



「しょーがねーじゃねぇか。俺だってホラ、トシの舐めたんだからおあいこだろ?」



俺は綺麗になった手を体操着で拭きながら言った。



「そんなトコで拭いてんじゃねーよ・・・」



トシは呆れたようにまた顔を伏せた。



「ちょっとちょっと、寝るならちゃんと俺の舐めてからにしてね〜。まぁ、ゴムはその辺に埋めちゃえばいいから。」

「オイ!」



またトシの顔が持ち上がった。


感じすぎて涙に濡れた目がほんのり潤み、頬は真っ赤になっている。 やっぱり可愛い。




*****




結局舐めさせられた。


乾燥と喘ぎですっかりカラカラだった喉にあの濃いのはキツイっての・・・。



「トシ、走れるか?」



・・・ったく、歩くのだっていっぱいいっぱいだっつの。


でも、そんな俺を気遣って優しく腰をさすってくれるその手がちょっと嬉しかったりもして。




「オイ、オメーら二人してビリだぞ。一体何やってたんだバカヤロウ。」



校庭に戻ると、とっつぁんが焚き火を前にパイプ椅子にもたれ、葉巻の煙をくゆらせていた。



「いや〜、ちょっと寒くて・・・」



勲がポリポリと頭を掻きながら言い訳を紡いでいると、とっつぁんはフンと鼻を鳴らし、焚き火に枯れ枝を投げ入れた。



「寒ィのはみんな一緒なんだよ。だからこうやって優しくも焚き火して待ってんじゃねーか。見ろ、一番だった総悟にはご褒美の焼き芋だ。」



赤々と燃える炎の陰から芋にかぶりつく総悟の頭が覗いた。


何がご褒美だ。 ただのドS同士のよしみじゃねーか。



「あ〜あ、寒ィ寒ィ。よし、ちっと早いが今日はこれで終わりだ〜。」



とっつぁんが立ち上がって焚き火の中に葉巻を放り込むと、生徒達はわらわらと校舎に戻り始めた。



「オイ、オメーら二人はこの火ィ片しとけ。総悟、芋。」

「あィ。」



総悟が枝で焚き火をつつくと、いい色に焼けた芋がゴロゴロと現れた。

ったくコイツらは・・・。



芋を抱えた二人の姿が小さくなると、俺は焚き火の前にしゃがんで火にあたった。



「はぁ・・・。」



色々な疲れに溜め息を零しながら手を擦り合わせていると、勲が隣にしゃがみ込み、総悟の置いていった枝で焚き火を掻き混ぜた。



「良かったな、上手くごまかせて。」

「・・・ちっとも良くねーよ。腰痛ェし、頭はボーっとするし・・・」

「まぁまぁ・・・・おっ! やった☆」

「?」



勲がパッと目をきらめかせて、手にした枝を動かした。



「ほら、芋が一本残ってたぞ。」



ジャージの袖を引き伸ばして芋を手に取ると、勲はそれを二つに割り、大きい方を俺に手渡してくれた。



「熱いから気をつけろよ。」

「あ、あぁ・・・」



同じくジャージの袖を伸ばしてそれを受け取ると、鮮やかな黄色の断面から美味そうな湯気が立ち上った。



「あ〜あ、もうこれ消したら4時間目サボっちまわねぇ?」

「・・・あぁ、そうだな。」



芋にかぶりつくと、ホクホクとした懐かしい味が口中に広がった。



「おっ、珍しいな〜。いつもはサボるの嫌がるのに。」

「まぁ、たまには・・・な。」



たまには、学生らしくのんびり気ままに過ごしてみるのも悪くねぇかも知れねぇな。


勲となら。





(了)




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・・・何コレ、じゃーじぷれい!?(笑)


いさおっちがアホっ子だよ〜。 トシたんが大人な感じだよ〜。


この話には何気に私の描く3Z近土設定が多数盛り込まれていたり。

同い年なのでトシたんがいさおっちのことを呼び捨てにしていたり、
あと3Z設定の場合だとトシたんの方が大人な性格になり、よりツンデレ度が増します。(笑)

トシたんが授業をサボらないのは、後々いさおっちにちゃんとノートのコピーを取らせてあげるため。
いさおっちは授業中爆睡で。 トシたんは元々成績優秀だといいなぁ。

で二人は家が隣同士の幼馴染みね。 家族ぐるみの付き合いで。



・・・余談ですが、個人的にはこの小説に出てくるとっつぁん&そごちゃんコンビがかなりお気に入りです。(笑)