貴方と歩くこの道は、

限りなく、優しい。






  帰り道






「あぁ〜、今日は疲れたなぁ。」

「まぁ、この接待でとっつぁんの株もだいぶ上がったみてーだし、そのうち俺らにも何かしら還元されんだろ。」

「だといいけどな〜♪」



幕府の重役・・・と言っても所詮は気味の悪い天人だが、そいつらの接待を終えた俺達は、とっつあんの見送りまで済ませた後、やっと帰路へついていた。



「なぁ、トシはお上から何か貰えるとしたらさぁ、何がいい?」

「んぁ? ・・・別に、何でもいいな。」



俺は隊服の懐から煙草を探り出すと、1本咥えてそっと火を点けた。



「トシは昔っから物欲無いよな〜。」

「そうか?」



近藤さんの蹴る石ころを見遣りながら、俺はフゥッと空へ煙を吐き出した。



「そうだよ。『剣の腕を上げたい』とかそういう欲求はあってもさ、『何か欲しい』ってのはあんま聞いたこと無い気がする。」

「でもよぉ、『剣の腕が欲しい』とかの欲求のがタチ悪くねぇ? 金で買えるモンでもないしさ。」



街を吹き抜ける風に、煙草の灰が肩へと散った。



「そうか? 金で買えるモンで簡単に満足しちまうよりは、よっぽどマシだと思うけどなぁ。」



近藤さんの大きな親指が、俺の肩に触れた。



「灰ついてる。」

「あぁ、悪ィ。」



携帯灰皿に短くなった煙草を押し付け、俺はうっすらと白くなった肩を払った。



「近藤さんはさぁ、」



ついでに腕の辺りも払いながら、俺は首を回して訊いた。



「何か欲しいモンとかねぇの?」

「俺か? うーん・・・」



顎ひげを撫でながらしばらく思案した後、困ったような笑顔で近藤さんは答えた。



「ねぇな。」



また、風が吹き抜けた。

秋口のひんやりとした夜風に、俺は心持ち襟を持ち上げた。



「そっか。」

「うん。みんなが元気でいてくれればさ、それで十分だよ、真選組は。」

「あぁ・・・そうだな。」



いつもと変わらない答えに、俺はうつむいて小さく笑った。


いつの間にか繁華街を抜けた俺達は、家々の立ち並ぶ静かな通りへ入っていた。
近藤さんが石ころを蹴る音はいつしか止み、俺はポケットに手を突っ込みながら、煙草をもう1本吸おうかどうかぼんやりと考えていた。



「トシ。」

「ん?」



名を呼ばれて振り向くと、左手が差し出されていた。



「寒いだろ? ほら。」



そうしてポケットから引き抜かれた俺の右手は、少しだけ強引に近藤さんと繋がれた。

分厚い掌から伝わるぬくもりは、絡まる指のお陰で全て俺のモノになるようで・・・



「ほら、もっとこっち寄れよ。」

「ん・・・」



フラフラと寄りかかる俺にビクともしないその体は、この上ない安心感に満ちていて・・・



「ちょっと酔っ払ったか? トシ。」

「あ?」

「ほっぺが赤い。」



この頬の熱は、貴方がくれた熱だと・・・



「あぁ・・・酔ったかも。」



言いかけて、やめて、もっと貴方にしなだれかかった。




「トシは弱いからな〜。」

「アンタこそ・・・下戸じゃねーか。」

「俺は弱くても立ち直るのは早いんですぅー!」

「ははは、そーかい。」



屯所の灯りは、まだ見えない。

もう少しこのまま・・・



「トシ。」

「ん?」

「寒い?」

「別に・・・ひっついてれば平気。」

「じゃあ・・・ちょっと遠回りするか。」

「・・・ああ。」



と、貴方も同じ事を思っていたのだと、喜びに熱さを増すこの頬を、今夜の貴方への労いにしよう。





(了)




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えぇっと・・・・・まぁ、ラブラブです。
二人とも・・・シラフのはずです、多分。(笑)

近藤さんは「寒くなれば、くっつけばいい。」とこういう思考回路の持ち主かと。
ちなみに土方さんの最後のモノローグは「人間ホッカイロ志願」です。


えー余談ですが、この話、ちょっぴりリッ○スライムの「黄○サラウンド」をイメージしてたり。
でもこれといって歌詞を見ながら書いたわけでもないし、あくまで「あの曲の雰囲気とちょっと合ってるかな〜?」
ぐらいのものですが。 この曲好きなので。この時期に合ってるし。