暗い暗いこの世界は

俺だけ 救いに導かない






  奈落もがきてまだ遠く   (後編)






「ん・・・んむ・・・っ・・・」



しゃがんだ膝に頬杖をつき、くぐもった喘ぎに耳を傾ける。

大きな近藤の手に上下に操られる無抵抗な土方の頭は、まるで鞠のようだな、などとふと思った。


操る近藤の顔に浮かぶ笑みは、とても無邪気な子供のそれとは程遠い恐怖を湛えていたけれども。



「う・・・んぅ───! ・・・ぐ・・・」



と、今まで大人しかった土方が一際大きな嬌声を上げ、沈められていた頭を浮かせた。



「ぶはっ・・・! げほっ、げ・・・ごほ・・・」



その髪の毛を鷲掴みにする近藤が促すように頭を持ち上げると、土方は虚ろな双眸を揺らしながら激しく咳き込み、必死に酸素を取り込もうとする唇から
ポタポタと粘りのある白濁液をシーツに零した。



「飲めねェのか?」

「・・・う・・・うぅ・・・」



鋭い視線を交えた近藤の問いに、しかし土方はマトモに喋る事もできず怯えたようにカチカチと歯を鳴らすばかりだった。



「今日はどうも出来が悪ィな。」

「・・・ぅ・・・っあぅ・・・!」



握り拳を作った近藤の右手が、容赦なく土方の左頬を打つ。

ごつっ、と鈍い音が響き、吹っ飛ばされた拍子に抜けた綺麗な黒髪が近藤の指からパラパラと散った。



「オイオイ・・・」



受け身を取る間もなく布団の外まで転がった土方を起こそうと手を伸ばしかけると、それより早く伸びた近藤の太い腕がその首根っこを──
着物ではなく文字通り首の後ろを乱暴に掴み、布団の上まで引き摺り戻した。



「ぐは・・・ぁ・・・」

「銀時、これ貸せ。」

「・・・ぁ、あ?」



ガタガタと全身を震わせて泣きじゃくる土方につい目を奪われていた俺は、一瞬、近藤の言葉に対する判断が遅れた。



「あ、オイ、それは──」

「ぅぐうっ・・・!」



止める間もなく、近藤は手にした俺のベルトを土方の首に回して片端を金具に通すと、後ろから素早く締め上げていた。



「ぁ・・・がは・・・っぁ・・・」

「ちょ、オイ止めろよ、死んじまうぞ!?」



腰に巻く為に作られたベルトには当然人間の首の太さに合う穴などなく、従って近藤の裁量次第で幾らにでも締め付ける事ができてしまう。

何だかんだ言っても一応は常識人のコイツの事だからまさかヘマはやらかさないだろうとは信じながらも、やはりもしもの事があっては──と、
俺は天に向かってベルトを引っ張るその腕を緩める方向へ引っ張り返した。



「死にゃあしねェよ。こんな事したって、コイツは感じてやがんだ。」

「や、そうかもしんねーけどさ・・・」

「ぁ・・・けほ・・・っ」



何とか止めさせようと爪を立ててみても、ベルトを引く近藤の腕はビクともしない。

俺は諦めて手を離すと、吊り上げられて上半身を起こした土方の首に密着したベルトの方を緩めてみようとそちらに手を掛けた。



「銀時、甘やかすなよ。」



苛ついたように眉間に皺を刻む近藤を尻目に、ベルトを剥がそうと首を掻き毟る土方の縛られた両手をどけて指一本でも差し込めないものかと格闘してみる。



「トシをいじめてェんじゃなかったのかよ?」

「うるせェ。やり過ぎだバカヤロウ。」

「・・・ふ・・・ぅ・・・」



耳元で弱まっていく呼吸に、最早プレイどうこうなどどうでもよくなる。

頚動脈の辺りに指を差し込みながら首の後ろで金具を押さえる近藤の指を全力で押し返すと、奴は漸く俺の意を汲んだのか、はたまた単に興醒めしたのか
ベルトから手を離し──一気にそれが緩むと同時に、土方はフラリと俺に倒れ込んだ。



「オイ、大丈夫か?」

「ぅ・・・ごほ、ごほ・・・」



無理に起き上がらせずに、そのまま布団に横たえて両手首を解放してやる。

もう逃げるにも抵抗するにも、そんな気力と体力はどう見ても無さそうだったので。



「・・・お前何しに来たんだ?」

「あァ?」



土方の表情が幾分和らいだのを確認して振り返ると、途端に近藤の手が俺の胸倉を掴み上げた。



「トシを助けてヒーロー気取りかよ。いい気なもんだ。」

「別にそんなつもりじゃねェよ・・・」



背筋がゾクリとした。



狂気を湛えた近藤の眼力は何度もやり過ごしてきたものだが、実際にこうして肉体的な力をも伴うと思った以上にその恐怖は増した。



(土方は毎日こんなんと一緒に居んのかよ・・・)



想像してみると今まで以上にその境遇が気の毒に思われて、俺は一人苦笑を漏らした。



「何がおかしい。」

「何でもねェよ。」



俺までコイツに飲まれてたまるか。


俺は近藤の手を払いのけると、傍らでぐったりと倒れている土方の頭を小突いた。



「それより──どうすんだよ。下らねェ事やってるうちにもう薬切れちまったんじゃねェのか?」

「関係ねェよ。」



近藤は短く言い放つとうつ伏せに転がる土方の腰を引き寄せて着物の裾を捲り上げ、先刻俺の放出した液でぐちゃぐちゃになった
尻を露わにさせた。



「テメェにとっては下らねェ事でもなぁ、俺はさっきので興奮してんだ。」



割り開いた裾から取り出した固く膨れ上がるものを、意識の薄れた土方の中に強引にねじ込む。



「ぁ・・・ぁぁああぁ───!」



喉に引っ掛かるような掠れた悲鳴が、押し出されるように漏れた。

既に濡れているとはいえ、俺のものより幾回りも太い、先刻しゃぶらせた時よりも更に太く勃ち起がったものに慣らしもせずに貫かれ、
土方は苦痛なのか快感なのか、パニックを起こしたように頭を左右に振り、もがき喘いだ。



「ああ、ぁ・・・ぅあ、あぁ・・・!」

「オイ、銀時も何かしろよ。」



激しく抜き挿ししながら、近藤は土方の悲鳴をうざったがるようにその頭を掴み、額を布団に打ち付けた。



「・・・土方の体持ち上げろ。」

「こうか?」



近藤がその上半身を抱え起こすや、俺は涙と汗で随分水っぽくなった土方の顔をしばし見つめ、その喘ぎの止まらない口に左指を
三本ほど突っ込んで乱暴に掻き回した。



「むぁ・・・ぐ・・・ぅ・・・」

「静かにしてろよ。御主人様がご立腹だ。」



熱く、柔らかい舌の感触を楽しみながら、紐を巻いたままずっと放置しっぱなしだった陰茎に右手を伸ばす。



「うあっ! ああぁ・・・!」



一度もイかされないまま赤黒く腫れたそれは少し握り込んだだけで相当の感覚を生むようで、土方は快感と苦痛の狭間で啼きながら
嫌々をするように首を振った。


近藤が腰を打ちつける不安定さの中、固結びにしてしまった紐を指先と歯を使って少しずつ解いてゆく。
先走りの流れる熱に顔を近付けているとすぐ鼻先に土方の雄の匂いを感じ、時折頭がクラクラとした。



「銀時、まだか? さっきからトシの締め付けがキツくてもう・・・」

「うっせェゴリラ! 勝手に出してろ。どうせ一回じゃ足りねェんだろ。」

「俺はいいけどよ・・・あんま激しくするとまたオメェに止め入れられそうだからな。」

「・・・もう知らねェよ。」



ギリ、と結び目を噛み、紐が解ける。

根元についた縛り跡をならすように数度扱き、ビクビクと震えるそれを口に含むと土方は嬌声を上げながらすぐに射精した。



「うぅ! ・・・ぃ・・・ぅう──・・・!」



俺の口の中に出しながら、土方の口は過ぎる快感を押し込めるように俺の指を強く噛み締める。



(・・・ッテェ・・・)



奴の出し切ったものを全て口の中に収めると、俺は体を起こして奴の口を開け、それを口移しに全て流し込んだ。


キス──なんてロマンチックなものではない。

唇など一ミリも触れずに、唾液交じりの粘っこい液体を上向かせたその喉に落とし込むだけ。
飲み下したのを確認すると、また指を突っ込みながら再び熱を集め始めたそれを銜え込む。



「ぅあ・・・ぁ・・・ん、ぐ・・・うぇ・・・」



時折中指で舌の奥を突くと、えずいて体が震え──同時に下も跳ね上がる。

そんな動きを楽しみながら俺は奴のものをしゃぶり続け、再び指を噛まれながら放出されると今度はそのまま飲み下した。



「うぇ・・・気持ち悪ィ・・・」



体を起こして口を拭うと、息も絶え絶えになっている土方の肩口から近藤が面白そうにニヤついている顔が見えた。



「トシの不味いか?」

「誰ンだって同じだろ。・・・うあー、テンション下がった。もう抜けるわ。」



土方の口からふやけた指を引き抜く。
見ると、唾液は手首の方まで垂れ落ち、人差し指から薬指までの付け根には赤い歯型がくっきりと残って殆ど力が入らない。



(やり過ぎたー、チクショー。)



そんな指をティッシュで拭いながら脱ぎ散らかした着物や帯を足で掻き集めると、近藤も最後に一度放出して漸う終いに
するようだった。



「もう帰んのか? シャワーくらい浴びて行ってもいいぞ。」

「いい。なんかもうこの空間気持ち悪い。」

「そうか?」



呑気な声に顔を上げると、近藤は散々いたぶり尽くされてピクリとも動かず布団に沈んだ土方の頭を、猫でもあやすように撫で回していた。



「アンタ・・・ホント意味わかんねーわ。」

「・・・何が?」

「それだよ。」

「どれ?」

「・・・もういい。メンドくさい。」



きっと、俺には一生かかったって分からない感情の構造が、奴の中にはあるのだろう。
奴という人間が、土方という人間に出会った事でしか生まれ得ない、何か特別な意思の繋がりが。

別に、それが羨ましい訳でもない。 あんなに命懸けのべったりした関係なんてうざったい。


うざったい──と感じるのは、俺にそういう特異な出会いの経験が無いからというだけかも知れないけれど。
俺にも土方のような奴がいれば、何か変わっていたのかも知れないけれど。


でも、もうそんな事を考えるのすら、面倒臭い。



(さっさと帰って寝よ・・・)



身に馴染んだ波柄の着物を羽織り、どうせ夜中なのだから、と適当に帯を締める。



「ホラ、これも。」



土方の首を絞めたベルトを、近藤が投げ渡す。



「テメーのせいで嫌な思い出付いちまったじゃねーか。」

「まぁそう言うなよ。」

「・・・大事にしてやれよ? マジで。」



最後に腰に愛刀を差す。 所詮通販の代物だが、これは汚されなくて本当に良かったと思う。



「じゃあな。」

「オイ、銀時。」

「なんだよ。もう疲れてんだよ。」

「いや、さっきなーんか気になったんだけどさ・・・」



土方を撫でる手が、ふと止まる。



「トシの味・・・『誰のだって同じ』って、お前誰かの飲んだ事あんのか?」
















































「・・・関係ねーだろ。」



ゴリラが何か言い返す声が聞こえたけれど、俺は心の中で──耳を塞いだ。





(完) 




───────────

えっとぉ・・・一応これで終わりなんですけど・・・も。


近いうち「番外編・銀の字の隠された過去」的なものを書かずにはいられません。(どーん)


なんでしょうね、こう・・・銀の字がトシを助ける辺りからどうも「受け銀」が書きたくなってしまって、
内心もう「勲ー! トシと銀の字まとめてやっちゃってー!!」ってな感じで。

なので次回作は「攘夷党の皆さん×銀の字(白夜叉)」を中心に、ことによるとまさかの近銀も有り得ますので
その辺御覚悟下さいませ。(えー)


そしてまぁ今回は前編にも増して「窒息プレイ祭り」にしてしまって。
窒息系ってどれくらい需要あるのかしら?
SMとかハードコア系見てもムチとか痛い系はあっても窒息系ってあるようでないような?

本音を言うと嘔吐系も好きなのですが流石にそれはご気分を害される方も多いかと思いまして控えめに
しているつもりです・・・け、ど、どうなんでしょうね? 好きに書いちゃっていいのかな?


ではなんだかグダグダな説明ばかりになってしまいましたがお読みいただき有難う御座いました!
銀の字一人称書くの楽しいよー!!(叫)


あ、あと一応書いておきますが最後の方の何も書いていない数行は演出ですので悪しからず。