移ろいやすい曖昧な世界は、

移ろうがままに漂ってりゃいい。






  真選組!! 〜土方十四郎誕生日の一日〜






その日早朝、一枚の文書が屯所のFAXから吐き出された。

一番早くに起床してその文書を見つけたとある平隊士はそれを読むや否やすぐさま顔色を変え、屯所の連中を叩き起こした。
勿論、俺ら幹部クラスの者でさえも。



「副長! 起きて下さい大変ですコレ・・・!」

「んぁ・・・? 今日は俺非番・・・」

「それどころじゃないんですって! コレ!」



ただならぬその剣幕に気圧され、俺は渋々起き上がってその文書に目を通し──眠気は吹き飛んだ。



「・・・おいおいコレ・・・近藤さん!」



それは過激派浪士集団・鯉幟党(こいのぼりとう)からの犯行予告状だった。

5月5日、つまり今日、大江戸遊園地に仕掛けた複数の爆弾を爆破させる、と。
詳しい爆破時間までは記されていなかったが、しかしその分、一刻も早い対応が明暗を分ける、そんな状況だ。



「・・・油断してたなぁ。コイツらは近頃殆ど動きを見せてなかったもんな。」



文書に目を通しながら呟く近藤さんの首にスカーフを巻き、俺は頷いた。



「あぁ。しかもよりによってこんな日だ。遊園地の人出も半端じゃねーだろうし、早く対策練らねェと・・・」

「とにかくすぐに先遣隊を出して状況を把握した方がいいな。山崎と吉村と・・・監察の奴らだけで間に合うかな。あとは
全員大広間に集めてくれ。俺はとりあえずとっつぁんに連絡入れとくから。」

「分かった。」



俺は近藤さんの肩に上着を掛けると、指示通り監察連中に先に行って様子を調べるよう申し渡し、次に各隊長を集めて事情を告げ、
それ俺の所属隊士に大広間に集まるよう指示を出させた。




*****




「えー、もう何人かは事情を知っているかと思うが、今朝ここに鯉幟党から大江戸遊園地の爆破予告が届いた。」



近藤さんが文書を掲げて見せると、何も知らされずに集まっていた平隊士達の間にどよめきが起こった。



「騒ぐな、落ち着いて聞け。近藤さん、続きを。」

「あぁ。今さっき山崎達監察を派遣して動向を調べるよう言った。それととっつぁんにも連絡を入れたら、まだ確実な情報が掴めて
いない段階では上を動かす事ができねェから、今は俺達だけで動けとの事だ。・・・どうする、トシ。」



一通り話し終えた近藤さんは文書を置き、隣の俺に振り向いた。



「そうだな・・まずは永倉達二番隊に行ってもらおう。今はまだ混乱を招くといけないから私服で内密に調べさせているところだが、
山崎達に合流して何か掴め次第、遊園地の人間に事情を知らせるんだ、いいな?」

「おう、分かった。」



永倉は頷き、頭に巻いた手拭いをきつく締め直した。
コイツは剣の腕もさる事ながら頭も良い奴だから、きっと臨機応変に動いてくれるだろう。そんな自信があった。



「それと、この屯所も狙われる可能性が十分にあるから残留組も作りたい。斎藤、三番隊で頼む。」

「了解。」



顔色一つ変えず頷く。
コイツの冷静さがあれば、たとえ狭く入り組んだ屯所の中での斬り合いになったとしてもスムーズな立ち回りが期待できる。



「後の皆はひとまずここで待機だが、連絡が入ったらすぐに順に出動してもらう。切り込み隊はいつも通り一番隊だ。総悟、現場の
指揮は頼んだぞ。」

「分かりやした。」



総悟が手にしていた刀の鯉口を切り、その手入れを欠かさない刃の輝きを確かめた。



「原田、十番隊は殿だからとっつぁんの許可が下りるまで待って、戦車や銃器類の運搬を頼む。」

「おう、力仕事なら任しとけ。なぁお前ら!」

「おう!!」



血の気の多い十番隊の連中は拳を掲げて野太い声を上げる。



「よし、俺と近藤さんは全ての配置が片付いてから現場へ向かう。何かあったらすぐ俺の携帯に連絡をくれ。そんなところでいいか、
近藤さん。」



振り向くと、目を閉じて静かに俺の話を聞いていた近藤さんは腕組みを解き、その目をカッと見開いた。



「皆、現場には爆弾のみならず多数のテロリストが一般客に混じって潜伏しているはずだ。くれぐれも警戒を怠らず、単独行動は
避けるように。命は大切にしろ。いいな?」



皆の気迫が空気を震わせるように伝わってくる。



「いざ、出陣だ!」

「うおおおぉぉぉぉ!!」



廊下側の障子がサッと開き、刀を手にした皆が一斉に駆け出した。



「!? おい・・・馬鹿ッ、二番隊だけっつったろーが! 何聞いてやがったんだテメーら!」

「え、皆で一緒に行くんじゃなかったの・・・?」

「オメーもかいイィィィ!!」



鋭かった目を一転、小動物の如くぱちくりとさせる近藤さんの後頭部に、俺は盛大な飛び蹴りを食らわせた。




*****




「ったく・・・しっかりしてくれよな。」

「あぁ、スマンスマン・・・つい興奮しちまってなぁ。」



二番隊を送り出し、他の隊士達も出動の準備でせわしなく動き回る中、俺と近藤さんは山崎からの第一報告を待つために大広間の
定位置に留まっていた。



「しかしトシは手際がいいなぁ。」



飛び蹴りの衝撃を受けた首をさすりさすり、近藤さんが呟く。



「んだよ・・・アンタだってやる時ァやる男なんだから、んな弱っちィ事言ってんなよ。」



煙草の煙を吐き出し、俺は答える。

と、その時上着のポケットが震え、着信を告げる電子音が鳴り響いた。



「山崎か、どうだ、そっちの状況は。」

『それが・・・思ったより大変なんです!』



答える山崎の呼吸が、幾分荒い。



「どうした、何かあったのか。」

『園内のあちこちのゴミ箱で、次々にジャスタウェイが爆発していて・・・』

「ジャスタウェイぃ?」



思わず聞き返すと、懐かしい名前に反応した近藤さんが携帯に耳を近づけてきた。



『はい。時限式か何かなのか、見つけて近付いてもすぐに爆発するんでマトモに寄る事すらできなくて・・・』

「怪我人は出てないか!? 客もお前らも皆無事か!?」



横から聞き耳を立てていた近藤さんが通話口を引き寄せ、訊いた。



『あ、局長ですか? 怪我人は居ないようですが・・・皆パニックになっていて避難させようにも収拾が・・・』



言いかけたところで、また遠くで小さな爆発音が鳴った。



「とにかくもうすぐ二番隊が到着するはずだから、なんとかそれまでに園の人間も使ってできるだけ客を安全な場所へ。俺達も
すぐにそっちへ向かう。」

『分かりました。一旦切ります。』



折り畳み式の携帯を閉じ、俺は騒ぎを聞きつけて大広間に戻って来始めた皆に向き直った。



「事態の進行が早まった。皆今すぐ出動して欲しい。総悟、すぐ出られるか?」



言うと、悠々と壁にもたれていた総悟はスッと玄関へ駆け出し、すぐにパトカーのエンジンとサイレンの音が聴こえてきた。
よく見ると既に広間に一番隊の人間はおらず、皆パトカーの中で待機していたようだった。



「やるな、総悟の奴は。」



弟分の頼もしさに、近藤さんがフッと笑みを漏らす。



「よし、こうなったらもう本部の指示は後回しだ。原田、とりあえず蔵の中のありったけのバズーカだけでも車に積み込んでくれ。」

「おう!」

「三番隊は言った通りここで待機、四番隊以降はすぐ出動だ!」



隊士達が動き出し、俺と近藤さんは最後の十番隊と共に現場へ急行した。




*****




「おぅ、お二人さん共ご到着ですかィ。」



遊園地の出入場口を突破して園内に入りパトカーを降りると、総悟がのんびりとした声で出迎えた。



「どうだ、状況は。」

「二番隊、監察、プラス園の職員でなんとか客は全員外に出したんですがねィ、見て下せェ、アレ。」



親指で指し示された方を見遣ると、園のシンボルであるツンデレラ城の塔の天辺、こどもの日仕様にひらひらとたなびく鯉のぼりの下に
複数の人影が見えた。



「ありゃァまさか・・・」

「テロリストさんのおでましでさァ。」



強い日差しの眩しさで顔の確認まではできないが、時折キラリと光る銃口や刃が連中のテロリストであることを物語っていた。



「どうやら客を避難させるまでは計算済みだったようで、一体どこに隠れてやがったんだか園の出入り口を封鎖した途端に湧いて
出ましてねェ・・・」

「という事は・・・」



パトカーから下りた近藤さんが、総悟の言葉を受けた。



「やっぱり奴らの狙いは初めっから俺達だったって事か。」

「そうなりますねェ・・・」



やんわりと言いながら、総悟はテロリストから近藤さんの体を守るように、やや前へ踏み出した。



『聞こえるか、幕府のイヌ共ォォー!!』



真選組が勢揃いするのを待ち構えていたように、拡声器で歪んだ声が届いた。



『かかったな! お前らの立っているその辺りは地面に地雷を埋めておいた。このスイッチを押せばお前らは一瞬で・・・』

「オイ、危ねーぞ、地雷だってよ。」



近藤さんが呟くと、皆ゾロゾロと後退し始めた。



『おっ、お前ら動くんじゃねーよ! スイッチ押すぞ! 押しちゃうぞ!?』

「うるせーな、ガタガタ騒ぐんじゃねーや。テメーらの目的は何だィ?」



総悟がスラリと抜いた剣を肩に担ぎながらテロリストを煽る。



『なんだその態度は・・・! お前ら、今日が何の日だか覚えてるか!』

「あぁ? テメーらみてェなガキの日だなァ。頭上の鯉のぼりが良くお似合いで。」

『何だとォ!』



相変わらず挑発し続ける総悟に、テロリスト共がざわつき始めた。



「オイ総悟、あんまり奴ら怒らせんなよ? ホントに爆破されたらどーすんだ。近藤さんも居んだぞ?」

「アンタは下がっててくんな。」

「あぁ?」

「トシ、いいからここは総悟に任せておけ。」



近藤さんが俺の肩を掴み、他の隊士共々再びジリジリと後退し始める。



『オイ! 動くなって言ってんだろーが!』



テロリストの一人が銃口をこちらに向け、引き金を引いた。



「総悟、危ね・・・!」



全てを言い終わる前に、総悟の体の左に爆音と共に土埃が舞い上がった。

本当に爆弾が仕掛けられている事に、背筋がゾクリとする。



(総悟はきっとこの状況に変に興奮しちまってるんだ。)



俺はとにかく近藤さんだけでも安全な場所に避難させようと後ろを振り返ろうとしたが、その近藤さんにガッチリと体を押さえられて
動けない。



『もう一度聞く、今日は何の日だ!』

「とんと見当が付かねェなァ。何の日だ? 教えてくんねーかねィ。」



総悟がザクリと剣を地面に突き立てた。



『忘れたとは言わせねェ、去年のこの日、俺達「鯉幟党」はテメーらに潰されかけたんだァ!』



思い出した。

一年も前の事で、しかもずっと動きが無かったのですっかり忘れていたが、奴らは去年のこの日もヘタクソなテロを企てて俺達に簡単に
潰されていたのだ。

なんの印象も残らぬほど、簡単に。



「近藤さん、そういう事だそうですぜ、覚えてますかィ?」

「いやぁ、ちっとも覚えてないなぁ。山崎、覚えてるか?」

「知りませんねぇ。」



・・・何だコイツら?



『オイ、いい加減にしろ! まだ思い出さねェのか!?』

「あぁ、知らねェなァ。」



総悟は地面に突き刺した刀をグリグリと動かし、何かを掘り出そうとしていた。



「近藤さん、今日は何の日でしたかねィ?」



掘り出した塊を掲げて。 そして・・・



「今日はトシの誕生日だアアァァァ!!」

「花火でも打ち上げますかィ土方コノヤロー!!」



打ち上げた。 刀の峰で。

奴らの頭上をひらひらと泳いでいた鯉が、屋根ごと吹っ飛んだ。



「さぁ、ケーキでも買って帰ろうか。」

「・・・え、ちょ、近藤さん・・・?」

「俺はチョコレートケーキがいいでさァ。」

「沖田さん、今日は『副長の』誕生日なんですからね〜。」

「あ、もしもし? 俺、永倉。あ、そう、分かったー。局長、斎藤達ももうパーティーの飾りつけ終わったらしいですよ」

「え、ちょ、ちょっと待っ・・・え?」

「副長、せっかくバズーカ持ってきたんでもう何発か打ち込んどくぜ!」

『あ゛ああぁぁぁー!!!』

「え、ちょっと・・・状況が読めねェんだけど・・・」

「まぁ去年よりはちったぁ進歩したみたいですけどねィ、奴らも。」

「しかし二度もトシの誕生日の日を狙ってくるたぁ太ェ奴らだ。ま、無駄な怪我人が出なくて良かったけどな。皆、よくやってくれた!」

「いいから早く帰って飲みましょうよ〜。こんなんに付き合ったせいで朝飯もロクに食ってないんスから。」

「え・・・おーい・・・ちょっ・・・誰か説明して・・・」

「トシ、何ボーっと突っ立ってんだ。帰るぞ〜?」

「え、近藤さんすらフォローしてくんないの・・・?」



何も分からぬまま、俺はパトカーに乗った。



「あ、園長ー。もう営業再開して大丈夫ですから。お騒がせしました〜。」



近藤さん・・・?


え、何コレ。 ドッキリ? ドッキリなのか?




*****




「おーいトシィ〜、いい加減機嫌直して出て来てくれよ〜。」

「うるせェあっち行け! テメーら全員切腹だ!」

「土方さん本気であんなの相手にしてたんですかィ?」



隊士が皆、俺の居室の前に集まって来ている。



「副長ー、何も事情を説明してなかった事なら謝りますから〜。」

「ザキ、謝る事なんて何にもねーや。あんなへタレ相手に本気で隊士総動員する醜態を晒したのは全部土方さん自身の
意思だからなァ。」



騙された。

奴ら皆覚えてやがった。鯉幟党が愚にもつかない連中であったことを。

それでいてそれを忘れて本気でテロ対策を立てる俺を見て勝手に冗談だと思い込み、止めもせずその冗談に全員で乗って
いたというのだ。


つまり・・・ドッキリだ。


酷い。 酷すぎる。



「トシー、俺だけでも入れてくれ〜・・・ってかもう入るぞ?」



障子が開く気配が、布団越しに伝わってきた。



「またそんなの被って〜。剥いじゃうぞ? 起きろ起きろ〜♪」

「触んな!!」

「ヒッ!」



布団に掛かっていた手がビクリと離れた。



「トシ〜、仕方なかったんだって。あのFAX見つけたの今年入ったばかりの新人だったからさ、去年の事情知らなかったん
だって。」



宥めるように布団の上に再び手が宛がわれ・・・



「そうだとしたっていくらでもホントの事言うチャンスはあったじゃねーかよ。」

「う・・・」



また離れた。



「──ホラ、皆今日はトシの誕生日で酒盛りができるから浮かれて冗談だと思い込んじゃったんだよ」

「俺ァそんな冗談言うタイプかよ!?」

「トシ・・・」



そっと布団を剥がれる。



「ゴメンな・・・? 俺が一番ちゃんとしなきゃだったのにな・・・」



悔し涙に濡れる瞼に、そっと指先が触れる。



「遊園地に居た人間にはちゃんと永倉達から『大した奴らじゃない』って説明がしてあったし何も被害は無かったら、それで
いいじゃねぇか。な?」

「・・・」

「とっつぁんも本気にしちゃいなかったし、上の人間にも何も伝わってないから。俺達だけの秘密だから。」



対外的には何ら心配なかろうが、俺にとってはその「隊内の秘密」の方がよっぽど苦しいんだけど。

でもそれすら恥ずかしくて言葉に出来ない。



「近藤さーん、もう待てねェや。先に飲んでますぜィ?」

「あぁ、悪いな。適当にやっててくれ。」



外の奴らの気配が消え、俺はゆっくりと目を開けた。



「お、やっと可愛いおめめが見えた〜♪」

「まだ許しちゃいねーかんな。」

「あ・・・そう。」



近藤さんがしょんぼりとうなだれる。

そういう姿には弱いんだからやめてくれっつーの。



「トシー、」

「・・・何だよ。」

「どうしたら許してくれる?」

「切腹。」

「そ、そんなぁ〜。ご冗談を・・・」

「言ったろ。俺は冗談が嫌いなんだ。」



再び布団を被る。



「トシー、」

「・・・」

「冗談嫌いなの?」

「・・・」

「でも、俺の事は好きだろ?」

「!」



この野郎・・・汚ねェ。



「き・・・嫌いだ。」

「でも俺は好きだからな。」



布団の上から、温かくて重いもの──近藤さんの体が、重なる。



「トシは俺の事嫌いになっても、俺はずっとトシの事好きだから。」

「・・・」

「だからいつでも、戻ってくる場所はあるんだからな。」



どうしてこうツボを突いてくるんだ、この人は。



「トシ、疲れたなぁ。今日は朝早かったし、一緒に寝直そうか?」



ああ、寝たいよ。 言えないけど。



「布団入っていい?」



勝手に入ってくればいいだろ。
聞かれたって素直に答えられやしないんだから。


近藤さんの体がもぞもぞと入ってきて、背後から抱き締められた。



「こういう真っ昼間に寝るのって気持ちいいよな〜。」



アンタが傍に居るなら時間なんて・・・



「トシ、誕生日おめでとう。」



誕生日なんか祝われなくたって・・・



「あとで一緒にケーキ食べような。」



ケーキなんか・・・



「あ、ちなみにプレゼントは俺だから〜・・・なんちゃって♪ 文句無いよな?」



文句なんか・・・



「あるわけないだろ。」



腕の中で、体を反転させる。



「・・・このプレゼント、賞味期限いつまでだよ?」

「トシが『いらない』って言うまで。」



言うわけ無いって分かってて、この人はそう言うのだろう。



「皆と飲まなくていいのかよ・・・?」

「トシは? トシの誕生日だろ?」

「俺は・・・」



このままここに居たい、って言ったら?



「俺は飲めねェからいい。」



何年経っても、真っ直ぐになんて言えねェな。



「俺も飲めないからここに居る。」



この人は・・・いつも空気を読んで俺に合わせてくれるんだ。



「・・・ホントに寝ちまうぞ?」

「いいよ。」

「またなんか事件起こったらどうすんだよ。」

「そしたら起きればいいじゃん。それだけだ・・・」



それだけ、って・・・。


でもこの人と居ると、本当にそれだけでいいのだという気がしてくるから、安心する。



「あんまり難しい事考えねーで、今日の事も楽しい思い出にしような。」

「それだけは絶対ねェ。あとで全員の頭殴って記憶消す。」

「また〜。」



近藤さんの腕が、ぎゅっと絡みついてくる。



「トシは可愛いな。」

「・・・んな事・・・」

「俺がそう思ってんの。いいだろ?」

「・・・いい。」



としか言えねーんだって。



「トシ、おやすみ。」

「・・・おやすみ。」



俺の誕生日なのに、すっかり近藤さんのペースだ。


ま、これがプレゼントなんじゃあしょうがねェか。


俺は諦めて目を閉じ、近藤さんの匂いに酔いながらやがて眠りについた。





(了)




───────────

長ェよ。 そして面倒くせェよ。(笑)


あの・・・あれです。
初めの方は割と「新選組」らしく楽しく書き進めていたのですが、うっかり話を深く広げすぎそうに
なってしまってギャグに逃げました。

でもネタばらしした後に改めて初めの方を読むと、トシたんのクソ真面目っぷりがかなり笑えます。(笑)


・・・ってかもうこれ誕生日関係ないですね。

ダメダメだぁ〜!!


あ、ちなみに私の中で「永倉=頭に手拭い巻いて頬に傷がある彼」、「斎藤=第15訓の13ページ、4コマ目の
原田の右にいる男前の彼」でした。