俺の命じる通りに動けば

ちゃんと愛してあげるからね。






  裏路地に散る   






隣を歩く影が、時折震える。


苦しげな浅い息を吐き出して。



「どうした、トシ?」



低い声で優しく問い掛けると、その影──トシは、身を固くしてぎゅっと唇を噛み締めた。



「っなん・・・でも、ねェよ・・・」



強がるその横顔、こめかみの辺りからつぅ、と汗が一滴流れるのを見て、俺は静かにほくそ笑んだ。


遊んでいるのだ。トシの体を使って。

仕事中に。市中見廻りの最中に。人々の行き交う表通りで。
風営法違反で検挙した天人から没収した電動の性具を、トシの体に埋め込んで。


ポケットに突っ込んだ右手で小さなプラスチック製のリモコンを操作する。

初めから入れっ放しのスイッチはそのままに、振動の幅を調節するつまみを親指でぐいと押し上げると



「ひぃっ・・・!」



トシは小さく引き攣った呻き声を上げ、下腹を押さえてその場に立ち止まった。



「何してんだ。早く行くぞ。」



一層硬直したその体を隊服の袖を引っ張って無理矢理歩かせると、しかしトシは覚束ない足取りで二、三歩進んだところで、
ガクリと膝を折って片手をつきながら通りの真ん中にしゃがみ込んでしまった。



「──おい、」



右手のつまみはまだ上限には達していない。


存外早く訪れたらしい限界に軽く苛立ちながら再び袖を引くと、トシは生唾を飲み込んでブルブルと首を左右に振った。



「・・・む、無理・・・」



乾いた薄い唇から絞り出すような声が紡がれる。

青ざめた顔を伝う冷や汗の筋はその数を増やし、首に巻かれた清潔なスカーフに吸い込まれていった。


只ならぬその様子に、流石に道行く人々も俺達を振り返る。

まぁどうせ大方単なる腹痛か何かだとしか思ってはいないだろうが。



(・・・仕方ねェな・・・)



俺はトシの左脇の下に腕を入れてその体を持ち上げると、目に付いた手頃な裏路地に引き込んだ。


そこは酒屋の裏であったのか空の酒樽が無造作に積み上げられ、俺は上手い事目隠しになるように表通り側にその樽を
高く積み直してから低く重ねた樽の上にトシを座らせ、やや見上げる形になったその顎をぐいと上向かせた。



「ちぃと我慢が足りねぇんじゃねーか、トシ。」



鋭い目つきと共に低くドスの利いた声で訊ねると、トシはビクリと体を震わせた。



「・・・ご・・・ごめ、なさぃ・・・」



あからさまに不機嫌さを見せる俺の姿に本気で怯えているのだろう、どんどん潤んでくるトシの双眸に、俺は同情するどころか
逆に加虐心を募らせた。



「まだMAXまで上げちゃいねぇだろうが。こんなんにも耐えられねーってのか?」

「・・・っああぅ!」



言って、右ポケットから取り出したリモコンのつまみを一気に最大限にまで押し上げると、トシは短く叫んで弾かれたように
体を揺らし、樽がガタリと音を立てた。



「・・・はう・・・っく・・・!」



グスグスとべそをかきながら腹を押さえて身を縮めるトシを、俺は冷徹な目で見遣った。



「そんなに気持ちいいのか。」

「・・・っち、ちが・・・」

「じゃあ嫌なのか。」

「・・・ゃ・・・ぁぅ・・・」

「どっちなんだよ。」



ガン、とトシの座る樽を蹴りつけると、トシはひっと声を漏らして首を横に振った。



「・・・や・・・ぃやだ・・・っ!」

「嫌なのか?」

「ん・・・っ」

「じゃあ自分で出せ。あまり時間ぁねーんだからさっさとしろよ。」

「え・・・」



チラリと腕時計に目を落としながら言い放つと、ぼんやりとしていたトシの目が途端に「信じられない」とでも言うように丸く
見開かれた。



「何だ。元はと言やぁトシがちゃんとできるっつったから入れてきたんだろうが。言いつけも守れねぇ癖に何か文句でもあるってのか?」



そう。
午後の見廻りが始まる10分前、「今日はコレでも使ってみるか?」と提案する俺に、トシは諾と言った。


いや、正確には「言わせた」。
俺の言う事は何でも拒まず聞き入れる可愛いトシの健気さにつけ込んで。



「どうなんだ。ちゃんと言う通りにできんのか。」

「・・・す、する・・・。するから・・・!」



重ねて訊くと、トシは震える指でベルトを手繰り、のそのそとズボンを脱ぎ始めた。

薄暗い、とは言ってもまだ午後4時前で、十分な日の光が射し込む裏路地にブーツまで脱ぎ去ったトシの白い下肢が晒される。



「手は使うな。俺によく見えるようにしろよ。」

「・・・は、はい・・・」



トシは脱いだズボンと下着を傍らの樽に置くと、肩のつく位置を少しばかりずり下げ、立てた膝を胸元に引き寄せて尻を幾分突き出す
ように座り直した。

俺は腕を組んで向かい側の壁に寄り掛かりながらその痴態を見つめ、フッと嘲笑を漏らした。



「嫌だ嫌だっつってた割には、随分前を元気におっ立ててんじゃねぇか。」

「・・・ご、ごめんなさい・・・」



恥部を指摘すると、トシは再び泣きそうになっている顔を俯かせ、先走りの蜜に潤った前を手で覆った。



「前には触るな。・・・そうだな・・・3分以内に出せ。できなかったらここに置いてくからな。」

「・・・え・・・?」

「分かったならさっさとしろ。交代の時間までに戻れなかったら次の奴らに迷惑だろ?」



トシを脅すためだけに言っているのではない。

俺だって隊の皆が大事だ。個人的な欲望にばかりかまけるほど愚かしい局長になるつもりも、それに付き合わせる副長を作る気もない。



「ほら、早くしろよ。今から3分な。」

「・・・わ、わかった。すぐ・・・」



左腕を目の前に掲げて時間を計り始めると、その向こうでトシが体に力を込めるのが分かった。



「ん・・・っ! ・・・ふ・・・」



踏ん張る声が聞こえてくるも、後孔はヒクヒクと窄まるばかりで一向に開く気配が無かった。



(それもそう・・・か。)



容易に落ちないように、とあらかじめ深めに差し込んでおいたそのローターは、依然として最大限の振動を保ったまま内壁を刺激し続けて
いるのだ。 この状態では踏ん張ろうにもロクに腹に力など入らないだろう。



「んん・・・っ、く・・・!」



涙交じりの吐息と共に1分が経過した。

その事は伝えなかったが、俺の様子からそれなりに何かを感じ取ったのか、紅潮した顔に焦りが見え始め、俺は心の中でまた小さく笑った。



「ん・・・んぅ・・・っ! ・・・はぁ・・・」



最早ただ力むだけでは無理だと悟ったのか、トシは両手で下腹をぐっと押しながら不安げな瞳で俺を見つめた。



「どうした。ボーっとしててもどんどん時間は経ってるからな。」

「・・・あ・・・こんど、さん・・・」

「何だ。」



と、トシの目線が俺の顔からやや下に向けられたのを感じ、俺はその目の先、右ポケットからローターのリモコンを取り出した。



「これか?」

「あ・・・お、お願・・・スイ・・ッチ・・・」



切ってくれ、と言いたいのだろう。

今更投げ掛けられた愚問に、俺は眉間の皺を深めた。



「駄目に決まってんだろ。」



2分が経過した。



「もう時間ねェぞ。下らねー事考えてねェで集中した方がいいんじゃねェのか。」

「・・・ぅ・・・」



リモコンを仕舞うと、トシは諦めたようにうなだれて再び腹に力を込め、樽を軋ませた。


窄まった後孔からぷちゅ、と透明な液が流れ、もうすぐローターの頭も覗きそうな気配がしたけれど、それが完全に吐き出されるまでに
踏ん張るにはあまりに疲弊し切っているように見え──



「・・・3分経った。先に屯所に戻ってるからな。」



俺はせめてもの慈悲に、とローターのリモコンをその場に投げ捨て、表通りへと踏み出した。


背後でドサリと音がし、歩きながら振り返ると樽から降りたトシがそのリモコンに縋りつき、荒い息を吐きながらつまみをぐいと押し下げる
のが見えた。




   




*****




屯所の居室に戻って30分程経つと、ト、トト、とやや不規則な足音が廊下を辿り、俺の居室の前で止まった。



「・・・トシか?」



書類に目を通しながら訊くとスッと障子が開き、所々薄く土埃を浴び、立っているのもやっとといった様子のトシの姿が現れた。



「・・・酷い顔だな。不意討ち食らっても文句言えねぇぞ?」



フフ、と冗談交じりに言いながら手元の書類に判を捺すと、トシは後ろ手に障子を閉めてペタリと座り込んだ。



「指突っ込んでちゃんと出せたか?」

「・・・ん・・・」



トシはズボンのポケットから5cm程のカプセル型をしたピンク色のローターとリモコンを取り出し、掌に載せて俺に示した。



「はい、よくできました。」



拭うものが無かったのだろう、まだ蜜の絡みついたままのそれを受け取り、俺はその掌の向こう、トシの股間の膨らみがまだそのままに
なっている事に気が付いた。



「・・・抜いてこなかったのか?」

「ん・・・我慢、したから・・・」



言って、トシはぐったりと背を丸めた。

あれだけの事をした後で何食わぬ顔で平静を保ちながら帰ってくるのはさぞかし辛かったことだろう。


しかし俺が許可するまで射精を許さない事もまた平生からの言いつけだった。



「そうか・・・偉いな。」



頭を撫でてやると、トシは潤んだ眼差しを向けながら膝枕をせがむように擦り寄ってきた。



「今夜はお仕置きしようかと思ってたけど、我慢できたから許してやるよ。」

「・・・ん・・・」

「イッていいぞ。」



手を離して再び書類整理に戻ると、トシは胡坐を掻いた俺の膝に頭を預けながら服の上から自分で前を擦り始めた。



「ん・・・ぅあ・・・あ・・・っ」



はぁはぁと濡れた吐息を紡ぎながら、やがてその身は細い嬌声を上げてブルブルと大きく痙攣した。



「あっ・・・! ・・・ぁぅ・・・ぁ・・・」



そのまま気を失って動かなくなったトシを横目で見遣ると、閉じた瞼の間からすぅっと涙が零れてズボンに染み込んだ。



(可愛いな・・・)



一挙一動、その全てが俺を愉しませる。


俺はトシの衣服を緩め、押入れから取り出した座布団を枕代わりにさせて部屋の隅に寝かせ直すと、すやすやと寝息を立てるその体に
毛布を纏わせ、新たな書類に判を捺した。





(了)  挿絵:RENZI様




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え、え〜と・・・。

初書き非道小説・・・のはずが今一つ非道になりきれなくて結局ハッピーエンド?
なんじゃこりゃ。

・・・あ、あの、表に置いてあるような小説とは別次元の二人だと思って読んでいただけると
良いかと。


ドSいさおっちの台詞は書いててとっても楽しかったです。
Mっ子トシたんのキャラはまだなんか掴みきれてません。


いさおっち×トシたんの関係性は
「御主人様×奴隷」もしくは「飼い主×ペット」かと。

いずれにせよ主従で、いさおっちはトシたんの事がものっそ可愛くて、
トシたんもいさおっちに忠誠を誓って止まないのだと思います。


だから・・・これでいいのさ。 ヒィー。


*追記*

素敵画家・RENZI様より挿絵を頂戴致しました!
背景から色使いから全てが小説イメージ通りのエロ可愛いトシたんなので、
合わせてお楽しみ下さいませ♪

RENZI様、有難う御座いました〜!!(拍手)