君がここにいるだけで、「俺は世界一の幸せ者だ」って、
胸を張って叫ぶよ。
夢現
花畑にいる夢を見た。
一面の緑の中には、赤・ピンク・黄色・紫・・・色とりどりの花が咲き乱れ、その花達を灼くかのごとくに照らす強い日差しは、むせ返るような芳香を俺の鼻腔に届けた。
(・・・トシがいない)
クラクラするような濃い空気の中で、真っ先に頭を過ぎったのはその不安だった。
俺は無意識に草を掻き分け、駈けるようにしてトシの面影を探した。
しかし際限なく続く緑の海はその色彩を濃くするばかりで、そのうちに草に足を取られて躓いた俺は、そのまま前のめりに花の中に倒れ込んだ。
(・・・もう、先に屯所に帰ったのかも知れないな・・・。)
絶望を紛らすように、俺はそう自分に言い聞かせた。
「屯所に帰ればトシがいる」、そんな幻想は・・・いや、幻想なんかじゃない。それは現実。
夢のような、だけど夢じゃない、確かに俺に保証された、幸せすぎるほどの真実だ。
身を起こすと、様々に綾を成していたはずの花達は、一様にその花弁を鮮やかな赤色に変えていた。
(赤・・・か。 トシは赤が好きだから、お土産に摘んで帰ろう。)
俺は一人微笑みながら頷くと、膝前にすうっと伸びた花の茎を手折った。
「・・・っ、いてて!」
(・・・花が喋った?)
ふと目を覚ますと、俺は花の香り・・・のシャンプーの香りのするトシの髪を、グイグイと引っ張っていた。
「い・・・痛ェ・・・、何すんだ・・・よ!」
「ごふぅっ!」
同じく寝ぼけていたトシの振り回した腕が顎にクリーンヒットし、俺ははずみで布団から転げ落ち、そこでようやっと夢から現実へと思考回路を繋ぎ合わせた。
「ト・・・トシ、すまん! その・・・寝ぼけてて・・・」
「・・・んだよ、もー!」
朝に弱いトシは、あからさまに不機嫌な形相で俺を睨みつけた。
が、すぐにその目を伏せると、もう一度睡眠に戻ろうとするように頬の辺りまで布団にもぐり込んだ。
「ったく・・・折角いい夢見てたのに・・・」
その呟きを、俺は聞き漏らさなかった。
「え、何、『いい夢』って? おせーて、おせーて♪」
「ヤだよ。近藤さんなんかに教えねー。」
すねて反対側を向いてしまったトシに、俺は負けじとばかりにその胸や腹目がけてくすぐり攻撃を仕掛けた。
「っ・・・ははっ! ちょっ、何すんだよ・・・」
布団の陰からトシの可愛い笑顔が覗いた。
「トシがこっち向いてくれるまでやめニャイ。」
すっかり気を良くした俺は、更に奥深くまで手をもぐり込ませた。
しかしそれをよけようとトシが大きく身を捩った拍子に、袷に引っ掛かった俺の手はその着物を引っ張り、ぐい、とトシの左肩を顕わにしてしまった。
「あ・・・」
「っ!! す、すまん、ト・・・シ・・・」
慌てて着物を戻そうとした俺の手を、しかしトシはそのまま布団との間に挟みこむように、ゆっくりとその身を仰向けに横たえた。
心持ち眉根を寄せたその表情に怒りの色は無かったが、俺の胸には別のある予感が湧き起こっていた。
「・・・近藤さん・・・」
「・・・うん?」
俺の目は、綺麗に鎖骨の浮き出たトシの肩口に釘付けになっていた。
「俺・・・さっきまで、近藤さんとこうなる夢・・・見てた。」
「・・・ああ、そ・・・っか・・・。」
予感は的中した。
心持ち寄せられた眉根と、潤んだ伏せがちの瞳、僅かに震える唇。
それは、トシが俺を欲している時のお決まりの合図だった。
「・・・それで?」
続きを促したが、トシから返事の言葉は出なかった。
わかっている。トシはここで、恥ずかしげもなく自分の欲求を吐露するような奴じゃない。
昨夜トシがこの部屋に来て俺にキスした時から、薄々感付いてはいたんだ。 トシは、こうなることを望んでいたのではないか、と。
でも、トシはそれを言わなかった。そして今も。
待っているんだ。俺の方からトシを抱きに掛かることを。
これは俺の思い上がりなんかじゃない。
トシが、その自尊心から口に出すことのできない微かな望みを、俺はいつだって見抜いてきたつもりだ。 そして今も。
俺はトシの背の下から挟まれていた右手を抜き取り、先刻から俺の目を引き付けて止まない白い鎖骨を、その指先でなぞった。
「正夢に・・・してやろうか?」
トシの瞳が、はっとしたように俺を見つめ返した。
「いや、正夢にする。」
いまだ戸惑うトシをそのままに、俺はその右肩までも顕わにするほどに存分にトシの着物の袷を開くと、明け方の仄青い光に照らされた白い胸元にキスを落とした。
「あっ・・・!」
トシの手は反射的に俺の頭を掴んだが、しかしその手は俺を引き剥がすこともなく、むしろもっと、とせがむように強く俺を抱え込んだ。
「あっ、あっ・・・」
胸の突起に舌を這わせると、その動きに合わせてトシの喉から甘い声が漏れ、同時にその体もビクビクと波打った。
たったこれだけの愛撫にも全身で反応してくれることが嬉しくて、俺はもっと先まで進んでやるために、右手を伸ばして人差し指と中指の二本を、トシの口に含ませた。
「ん・・・っは・・・あ・・・」
わざと焦らすように指を動かすと、それを捕らえようと懸命に舌を動かすトシの様子が堪らなく可愛かった。
「ちゃんと濡らせよ?」
「ん・・・」
身を起こして言い聞かせると、トシは両手で大事そうに俺の手を握り、丹念にその指をしゃぶった。
その手や舌が微かな怯えにうち震えていることにすら気付かないほど興奮していた俺は、着物の裾を捲り上げて下着を脱がすと、トシの口から指を引き抜いてその後孔に宛がい、
そのまま二本まとめて中へ挿し込んだ。
「あっ! あぁ・・・」
慣らすように指で押し拡げてやるだけで、感じやすい体はビクビクと震えながら俺にすがり付いてくる。
目尻に浮かぶ涙の雫を唇で拭ってやると、トシは首を反らせて唇へのキスを乞うた。
「ん・・・こんど・・・さん・・・」
掠れた声に促され、俺はトシの中から指を抜くと、噛み付くようなキスと同時に硬くいきり立ったものを一息に押し込んだ。
「んっ! ・・・く・・・あっ、あっ・・・!」
苦しさに暴れ出しそうになる脚を抱え込みながら、俺は殆ど本能の赴くままに抜き挿しを繰り返した。
トシは時折息を詰まらせながらも俺の動きに応え、とろけそうな熱さでもって俺を締め付け返していたが、やがて限界が近づいてきたのか、首に回した手が
力なく俺を引き寄せた。
「はぁっ・・・は・・・ん・・・こ、こんど・・・さん・・・」
間近に飛び込んできたトシの顔は目の縁や頬が紅潮し、うっすらと肌を覆う汗の艶や熱い呼吸と相まって、俺をも限界に追い込む色香を放っていた。
「っ・・・トシ・・・」
引き攣る首筋に強くキスを落としてやると、俺はトシの最奥に己の欲望を解き放った。
*****
再び目を覚ますと、隣には俺の腕に抱きついてすやすやと寝息を立てるトシの姿があった。
(・・・夢・・・?)
にしてはあまりに現実感を帯びていた気がして、俺は睡眠を妨げぬよう注意しながら、トシの頭を僅かに動かした。
そこに現れた白い首筋には確かに俺の付けたキスマークが紅く跡を残し、視線を上げると、いつもはくっきりとした線を見せている二重瞼が、涙に腫れてその溝を浅くしていた。
(やっべー・・・やっちまったな〜・・・)
今頃訪れた言いようの無い罪悪感に、俺は掌で目を覆った。
視界を失うと、トシの体温や穏やかな寝息が先刻よりもずっと強い存在感を持って俺に迫ってきた。
トシがここにいる。
俺にすがって、俺を求めて、俺に寄り添って、安心して眠っている。
俺の存在がトシの存在を支え、トシの存在が俺の存在を支えている。
その事実がこの上なく幸せで、俺は横目でトシの寝顔を盗み見た。
(・・・また、いい夢でも見てるのかな?)
午前5時半。
起床までのあと30分、俺は自分も夢の世界に入り込んでやろうと、微笑を浮かばせながら眠るトシの体を、強く抱き締めた。
(了)
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いや〜、恥ずかしー!!(笑)
昔は結構平気でエロ小説を書けたものでしたが、何か今この歳になってエロを書いてみるともんのすごい恥ずかしいですね。
私も大人になったなぁ・・・☆(←そういう問題か?)
まぁ、この小説で一番注目していただきたいポイントはと言いますと、
「ヘタレ→小学生→大人→夜の帝王」という近藤さんの転身ぶりですね!! 「やめニャイ。」(笑)
私の中の設定では、近藤さんは普段優しい反面、閨ではかなり強気です。
そして土方さんは「ツンデレ」。この一言に尽きます。(笑)
しかしまぁ、この小説では私自身が大好きなシチュエーションというか、「近藤さんは土方さんのことをこう思っているといい」
というような理想像を存分に出せた・・・ような気がしているので満足です。
こんな二人が大好きです。 (・・・ってか言い訳長ェな、自分・汗)